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大恋愛のあと
一緒に暮らす相性は?


「情熱が高まる」要素と「長続きする」相性は別のものだと言われます。恋の情熱と結婚相手つまり人生のパートナーとして一緒に暮らしうまくやっていくための相性は違いがあるというわけです。

 一緒に暮らす相性はお互い似た者同士の方がうまくいくと言われています。そして、この相性を左右するものの一つに「育ち」があります。
 
 『ロミオとジュリエット』は悲劇的な結末をむかえますが、二人の生まれ育ちは敵同士という以外にはわりあい似ています。お互いに共通の友人たちもいるわけです。

 なので、二人は結婚していたらうまくいった可能性は高いですね。たとえ、出会ったころの情熱は下火になったとしても、子供を産んで育てて、孫ができて、おじいちゃんおばあちゃんになっても、多少ケンカや浮気心が生じたにせよ、そこそこうまくやっていけたのではないでしょうか?

 長続きのするカップルの相性は、生まれ育った家庭や周りの環境に共通点が多いことが好条件です。

 だとすると、身分違いの恋や敵国出身の相手より、自分に近い相手を選んだほうがうまくいくということになります。

 現代の日本では、一見したところ、家庭環境などそれほど違いがあるようには見えません。文化社会の価値観や暮らし方は均質化しているように思えます。
 
 しかし、実際には「育ち」の違いというものがあるのです。「育ち」が違うと、ふたりは一緒に暮らし始めても、食い違いが生じてきます。

 次に、その「育ち」の違いとはどういうものかについて説明します。そして、TBSドラマ『大恋愛』の尚と真司の一緒に暮らす相性を見ていきたいと思います。

 
ここでいう「育ち」の違いというのは、いささか古風な身分の違いといった上下関係ではありません。「育ちがいい」とか「悪い」というよし悪しの問題でもありません。

 その人が生まれ育った家庭のなかで、身につけてきた価値観や生活習慣などを指しています。それらは大人になっても、その人の生き方のベースとなり、ごく当たり前のようにその人の価値判断や行動の基準となっているものです。

 <トピック>
 高貴な育ちがお似合いのカップル 誰からも好感を持たれそう。
 絢子さまご結婚 笑顔いっぱい「何と幸せなことか」(FNN)
 
 やんごとなきお方はさておき、生まれ育った家庭の価値観は、大きく分けて
 たとえば……

【サラリーマン家庭】
 
・父親は平日は会社で仕事をし、昼間は家にいないのが当たり前。
  子供はふつう父親が仕事をしている姿を見たことがない。
 ・ふつう土日が休みで、給料・ボーナスが振り込まれるのは当たり前。
 ・収入は比較的安定している。
 ・母親は専業主婦かもしれない。働いていてもパートでフルタイムは少なそう。
  なぜなら、扶養控除枠以内の収入であれば、税金はかからないから。
 ・主婦は夫が家に帰ってきたときには、普通家にいる。
 ・毎日の食事は、ふつう主婦が作る。

【自営業で商売などをしている家庭】
 ・店で仕事をしている父親の姿をよく見かける。
  従業員がいたり、母親も店の仕事を手伝ったりして、
  家族みんなが働くのは当たり前。
 ・お金やものはわりと自由に与えられるかもしれない。
  少なくとも、金銭感覚はサラリーマン家庭とは違っている。
  土日が休みとは限らない。休日や盆正月などがむしろ忙しいときも
  ある。
 ・収入は安定しないこともある。儲かったり、もうからなかったり。
 ・商売・事業のために借金することは怖くない。
 ・母親も働いていることが多く、食事はかならずしも主婦が作るとは
  限らない。
  家族の食事は、忙しい時はてんやものなどをとることも多い。
 ・農業や漁業をしている家庭なら、季節や天候によって
  働き方も収入も異なる場合がある。

【作家やクリエーターのような自由業の家庭】
 ・親が家で仕事をしていたり、午前中は家にいることも多い。
  打ち合わせで外に出たり、締め切りに合わせた仕事で、
  生活は不規則なことが多い。
 ・考え方はわりと自由で、世の中の常識にはとらわれない。
 ・収入は不定期で、お金があるときとないときの差がある。
 ・特に「男はこう」「女はこう」という男女の性差についての
  固定観念にとらわれない。
 ・男だから、女だからというのではなく、実力の世界。
 ・仕事や作品が認められていても、収入とは直結しないことが
  ある。

【公務員の家庭】
 ・公務員の家庭は夫婦共働きも多く、女性が働くことに抵抗はない。
 ・公務員になれば生活は保障されているようなもの。
  また、地域での信頼も厚く、子どもは「あの子は学校の先生の子」
  「役所勤めの家の子」「警察官の子」といった見方をされる。
 ・収入は安定している。生活の不安がない。
 ・組織のヒエラルキー(階級がはっきりしている)。
  例えば、学校の先生だと、校長・教頭など。
  一般の公務員でも、地方公務員か国家公務員かなど。
 ・資格試験によってえらばれる仕事なので、
  資格や肩書にこだわり、それで人を判断する。
 
 じつは、こういった家庭環境の違いが、カップルの相性に大きく影響するというのは、宗教学者の島田裕巳氏が『3種類の日本教』という著書の中で指摘していることです。

 上には4種類の職業をあげましたが、自営業と自由業はひとくくりになっています。

 こういった「育ち」は親の世代だけではなく、祖父母の世代がどうであったか、また親せきや身内の暮らし方はどうかということも関係しているそうです。
 
 「育ち」の違いは、基本的な生活パターンから、男女の役割意識や金銭感覚、職業観、子どもの育て方、教育や学歴についての考え方、人付き合いの仕方、そして人生観そのものにまで影響しています。

 うまくいく可能性が高いのは、もちろん同じような家庭環境で育った相手です。

 たとえば、【サラリーマン家庭】と【自営業で商売などをしている家庭】やはかなり価値観がやライフスタイルが異なっていそうです。金銭感覚も違うでしょう。

 また、【作家やクリエーターのような自由業の家庭】や【公務員の家庭】を比べてみても、かなり価値観が違っていそうです。

 必ずしも「育ち」が違うカップルは、一緒にやっていけないというわけではありませんが、少なくともこういった違いがあることを知っておく必要はあるのではないでしょうか。

 『3種類の日本教』は2008年に出版された本なので、現代ではそのころと状況が違っているところもあります。
 
 例えば、IT系の会社などは、正社員であっても働き方や出社時間の自由があるとか、最近では自宅でも仕事ができるようになっていたりします。



 前置きが長くなってしまいました。

 『大恋愛』のカップルは、元作家でいまは引越センターのアルバイトをしている真司と女医の尚です。真司は親の顔を知らず、天涯孤独の身。経済的にもそれほど恵まれていません。

 作家ですから、自由業・フリーランス系ですが、それでは食べていけないという問題を抱えています。そこで、アルバイトをしているわけです。不安定な暮らしですね、

 尚は女医です。母親も女医で病院の経営者でもあるらしく、かなりやりてのようです。父親の影はありません。

 医者には勤務医と開業医があり、仕事の形態はだいぶ違うようです。勤務医だと公務員系とにたところがあるのでしょう。開業医の場合、自営業的な要素が入ってきます。

 尚と母親は自分たちの裁量でいろんなことを決めることが可能なようです。

 尚の元婚約者井原郁市は精神科医、准教授の肩書があります。大学病院でしょうか。勤務医であり、公務員的な要素もあるのかもしれません。

 一見、医者同士、尚と郁市の方が「育ち」の相性はいいように見えます。

 しかし、郁市の家庭は母親が主婦のように見えます。父親はどこかに勤めているような感じで、かなり高い地位にいるのでしょう。こちらの家庭は、サラリーマン系の価値観に近いように思われます。

 医者同士ということでは、尚と郁市は似た者同士の相性の要素を満たしています。ただ、家庭の価値観はむしろ、異なっているように見受けられます。

 二人の将来を推測すれば、クールな二人ですから、結婚してもうまくやっていけたでしょうけれど、お互いに尊敬しあいながらも、気持ちは離れたままだったかもしれません。

 他方、尚と真司ですが、真司が小説家というのはとてもうまい設定です。真司がただ引っ越し会社で働くアルバイトというだけでは、ふたりにとって「似た者同士」の接点がまるでないということになってしまうからです。

 尚が真司の書いた小説をリスペクトしているところ。これは知性・感性のレベルで共有できるものがあるということです。

 母親の病院で働く尚は、時間も自由になるところがあります。自営業・自由業的なスタイルをとれるとも言えます。

 しかも、金銭感覚は尚の母親と真司は意外に似ているのです。サラリーマン系や公務員の家庭なら、封筒に札束を入れて渡したりはしないでしょうし、それを受け取って適当に使うといったこともしないでしょう。

 とりわけ、公務員は金銭感覚にシビアです。

 尚が若年性アルツハイマーという病気でなければ(もっともその前提がないと『大恋愛』のドラマが成り立たないのですが、ふたりは意外とふつうに、最初は周りに反対されたかもしれないけれど、一緒に暮らしてうまくいくカップルだと推測できます。

結論:「育ち」は職業や家庭環境など、似た者同士の方が一緒に暮らしていく上では長続きする可能性が高い。親がサラリーマンならサラリーマンと結婚した方がうまくいきやすい。公務員なら公務員同士、自営業や自由業(この二つは非常に近い部分があります)なら、同じような環境の相手との方が、うまくいく可能性は高い。
 



 
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