恋の心理学/恋の診断/恋の真理

2020年4月19日(日)
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愛の基礎となる基本的信頼感

 母親に愛されなければ、愛される人になれないのか?

 恋人たちは愛するひとと身も心もひとつに結ばれたいという欲求をもっています。愛し合う者同士がお互いに求めあう、この一体化・合一化の欲求はどこからくるのでしょうか?

 心理学の分野では、この一体化・合一化の欲求は母親と胎児の関係にまでさかのぼるものと考えられています。胎児は母子一体の存在として、母体のなかで10か月近くを過ごします。
 
 生まれてきたばかりの赤ん坊は、身体的には母親から分離しているものの、まだ自他の区別がつかないので、母親の乳房や胸や腕なども自分と一体のものだと感じているのだそうです。

 赤ん坊は自分では何もできず、母親に乳を飲ませてもらい、おむつをかえてもらわなければなりません。すべての欲求を母親によって満足させてもらわなければならないのです。その欲求が満たされているかぎり、赤ん坊は不安を感じることはありません。

 けれども、赤ん坊は成長するにつれ、しだいに自分が母親とは別の存在であることに気づき始めます。このとき分離の不安を体験し、母親との一体感を求めようとするのです。ここに一体化・合一化の欲求の基礎があると考えられています。

 すべての人にとって、最初の愛の対象は母親、あるいは母親に代わる人ということになります。赤ん坊の母親に対する愛は原初的なもので、それは”愛着”と呼ばれます。

 愛着は男女の愛や、大人になってからの愛の土台になってはいますが、愛情そのものではありません。大人の愛はもっと高度なものだと考えられます。
 大人の愛は、相手を自分と同じように一人の独立した人格としてとらえたうえで成り立つものです。成熟した男女、また男女に限らない大人の愛は、自己形成と個人の自立を前提としています。


大人になってからの愛情関係に影響するもの

 生まれて間もない赤ん坊は、母親を通じて自分自身と世界に対する基本的信頼感を得ることになります。
 
 赤ん坊は全面的に母親に依存しているわけですが、このとき充分に世話されて育った子供は、世界を好意的に感じ取り、自分をそれだけ価値のある存在と感じることになります。

 けれども、もし空腹なときに乳があたえられなかったり、泣いても誰も来てくれず、そのまま放っておかれたりすると、世界は冷たく苦しみに満ちたものに感じられ、同時に自分自身に対する不信感が芽生えます。

 乳児期は母親あるいは実の母とは限らないが母親的存在に代わる人との関係が重要であり、この時期に愛されて育った子供は大人になってから他人を信頼し、接近していく反応の基礎が作られるということです。

 充分にケアされなかった子供は大人になっても人を愛するとができにくいといわれています。

 生まれて最初の母子関係が、大人になってからの愛情関係にも大きく影を落とすことになるわけです。乳児期に基本的信頼感を得られなかった子供は、大人になってからも幸福な愛情生活を送りにくいというのです。

 しかし、わたしたちは誰も幼児期の母子関係において、パーフェクトな基本的信頼感を得られている人などいません。誰においても、何らかの愛についての葛藤や傷つきが生じています。

 わたしたちは無傷のままで愛されるおとなになることはできない!ということです。
テーマ  愛の葛藤
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