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親密であるがゆえにはらむ感情的なジレンマ

あんなに好きだった二人が一緒に暮らし始めたらギスギスしはじめたのはなぜでしょう?

結婚生活を維持していくには、我慢と忍耐が必要だといわれることがあります。それはお互いに相手が自分の期待通りに動かないということを否が応でもわからせられることになるからでしょう。

結婚生活での葛藤は、まったくの他人同士であったふたりが密接にかかおりあい、一緒に暮らしていかなければならないところにあります。

ふたりが一緒に暮らすようになると、食事の仕方や食べ物の好み、睡眠時間、テレビや音楽の好みなど、それこそ日常生活全般にわたって、習慣の違いからくるぶつかりあいのタネがっきません。一日の始まりから終わりまで、あらゆることに夫婦間の不一致をきたす原因となるような事柄が見つかりそうです。

夫婦愛・家族愛より隣人愛の方が簡単?

男女の関係だけではなく、親子や兄弟姉妹、親しい友人との間柄などでも、親密であるがゆえにはらむ感情的なジレンマの問題があります。

わたしたちは地球の裏側にいる見知らぬ相手にやさしい思いを抱き、人類愛を説くことは簡単だけれど、すぐ身近にいるひとを完全に受け入れることはなかなかできないものです。近くにいる人を愛する「隣人愛」はなかなか実践できないものなのです。親密な関係にある相手を受け入れることこそ、もっとも困難な課題であるといってもよいでしょう。


一人だと寂しい、一緒にいると傷つけあう:<ヤマアラシのジレンマ>

「冬の寒い日、凍えそうになった二匹のヤマアラシがお互いに体を暖めあおうとして近づきました。ところがヤマアラシの背中にはとげがあり、お互いのとげで傷つけてしまいそうになり、離れざるを得ませんでした。けれども離れていると寒いので、再び相手に近づきました。するとまた背中のとげで傷つけあいそうになるのでした。

ヤマアラシは何度もこんな試みを繰り返したあと、ようやく、お互いにそれほど傷つけあわずにすみ、それでいながらある程度暖めあえるような一定の距離を見出しました。」

これはドイツの哲学者ショーペンハウアーによって語られた寓話で、「ヤマアラシのジレンマ」として知られています。心理学者は愛と憎しみの気持ちを説明するときにしばしばこの寓話を引用します。

すなわち、あまりにも親しい関係は、親しい関係であるがゆえに、夫婦であれ、親子や兄弟であれ、ほとんど例外なしに敵意や拒絶の気持ちを生じさせることになるというのです。親密な間柄になればなるほど、愛と憎しみの気持ちが並存するようになるというのです。

このように同一の対象に対して相反する感情を抱いている状態をアンビバレンス(両而価値)といいます。

そこで愛はひとを傷つけるものとなり、またそれによって自分自身も傷つくものとなりうるのです。ひとは愛を求めて近づけは近づくほど、お互いに傷つけあうような仕方でしか、関われないということなのかもしれません

ヤマアラシのジレンマはいわゆる「愛憎相半ばする」という関係です。やたらになれ親しんだり反発を感じたり、誰かと関わり合いをもつと感情的に抜き差しのならない状態になってしまうことがあります。

『エヴァンゲリオン』世代以降は、もっと繊細な傷つき方をする:<ハリネズミのジレンマ>

もともとはヤマアラシのジレンマと言われていましたが、ハリネズミのジレンマと記憶している人がいるかもしれません。「ハリネズミのジレンマ」という言葉はアニメ映画の『エヴァンゲリオン』の中で聴いたことがあるひとがいるのではないでしょうか?

現代の恋愛や結婚、対人関係のジレンマは、ヤマアラシのトゲほど尖ってはおらず、ハリネズミのトゲぐらいのものなのかもしれません。お互いの心に刺さる小さなチクチク。それはそれで繊細な傷つき方をしてしまうということなのかも。結婚するより一人の方が気楽という男女のなかには、こういった心のチクチクを感じることを避けたいという気持ちがあるのかもしれません。あなたはどうですか?

テーマ  愛の葛藤
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